結論

「TSUBASA」における鳥の失踪事件

TSUBASAの対応について、ここまで「どの部分が納得できないのか」「どの部分が不適切だと感じたのか」といった観点から述べてきました。

これらを踏まえた上で「ではどうすれば良かったのか?」「これからどうするべきか?」といった点を考え、結論としてまとめたいと思います。

なぜ批判されたのか

TSUBASAはなぜ批判されたのでしょうか。

TSUBASAはあくまで個人(法人)が所有・運営する施設です。税金で運営されている施設ではありません。その点では外部からの指示を受け入れる義務は無いと言えます。

しかし、会の理念として「鳥、人、社会の幸せのために」と謳っており、更に活動目的を読めば、その振る舞いに公共的な側面を期待されるのは当然の成り行きと言えるでしょう。

更に代表の松本氏は過去「近い将来TSUBASAをNPO法人化する」と様々な場で公言しています(いつの間にか「NPO法人」が「公益法人」に変わっているようですが)。

このような理念と目的、将来のNPO法人化を掲げて会員を募集し会費を徴収している以上、「個人の持ち物なので批判は受け付けない」という理論は無理があります。活動内容とその結果についてある程度の説明義務が伴うはずです。

もしNPO法人化された暁には、情報の徹底的な透明化が求められることは間違いありません。しかし、これまでのTSUBASAでこの「情報の透明化」が行われてきたとは言い難いものがあります。組織の体質を変えることは一朝一夕では出来ません。ことあるごとに改革に取り組む姿勢が必要です。今回の件はTSUBASAのNPO法人化に取り組む「本気度」を測るバロメーターとも言えるものです。

今回の件で多くの人が、TSUBASAに公共的な組織に準じた対応を期待したと思います。しかし、実際は期待からほど遠い対応だったことが、多くの批判を招いたと言えるのではないでしょうか。

そして、この「期待していた対応がなされず裏切られる」といった現象が、今回に限らず過去にもあったというのが、たくさんの批判が寄せられる大きな原因になっていると思います。

もし「TSUBASAは公共のものではなく個人(法人)のものであるから、外部から批判されるいわれはない」という思いがあるのなら、堂々とそう宣言すれば良いのです。単なる自己満足のための施設なら、私もこのようなページを作ったりはしません。

何が問題だったのか

寄せられた批判を前にして、「何が問題だったのか」を分析するのは大事な事だと思います。批判された原因を突き止め、不適切だった対応を改めることで、より高いレベルの活動が可能となります。そしてそれはいつか鳥たちを取り巻く環境の改善にも繋がるはずです。

そのためには、批判した人たちは何が不満だったのか、ひとつひとつ冷静に分析する必要があります。このページでも私が感じた不適切な点をまとめましたが、TSUBASA自らがこのような点を洗い出し、詳しく検討することを期待します。もちろん全ての批判を受け入れろという意味ではありません。不適切だった面を省みる機会と捉えて欲しいです。

TSUBASA NEWSに寄せられたコメントの中に、次のようなものがありました。

代表を責める気持ちはとても分かります。鳥を愛しているからでしょう。私も同じです。 でも代表が今までしてきたことはどんなことでしょうか。 その中には気に入らない、疑問に思うことも沢山あったはずです。 しかし、あんなにも沢山の鳥を助けることはあなたにできますか。 少なくとも、私にはできません。 TUBASAフォーラムがあなたに開けますか。この施設を運営しているだけでもすばらしいことだと思いませんか^^ 貴重なご意見ほんとうにありがとうございます。

このような考え方は非常に危険で無責任だと感じます。「この施設を運営しているだけでもすばらしいこと」かもしれませんが、それが「今回の件で批判してはいけない理由」になりません。過去の実績を理由に批判を封じてしまえば、不適切な点が改善される貴重な機会を奪うことになり、ひいては鳥たちの不利益に繋がります。

これまでどんなに素晴らしい活動をしていたとしても、それで今回の件が帳消しになるわけではありません。もちろん今回の件で、過去の実績が色あせることもありません。

くだらないコメントを擁護だと勘違いするような愚挙は組織を滅ぼします。TSUBASAは思考停止に陥ることなく、今回の件で「何が問題だったのか」を冷静に振り返ってもらいたいです。

再発防止とは何か

問題を起こした後に一番大事なことは、再び同じような悲劇が起きないようにすることです。松本氏も「再発防止」「2度とこのようなことがないように」といった表現を用いています。

TSUBASAが外敵に侵入されて鳥が犠牲になったのは

CAKを作った頃、クマネズミに侵入され、被害にあった事があります。 そのときは羽などが大量に落ちていました。そして、すぐ対策もできました。 深くお詫び申し上げます。

ということで、今回が初めてではありません。ただ「避難は完了、今後は気をつける」というだけではなく、実効性のある「再発防止」への取り組みが必要でしょう。

この「再発防止」とは何でしょうか。どんなに努力しても「100%」はあり得ませんので、「問題が発生した原因を特定し、最大限の対処をすること」というのが現実的な解でしょう。

「鳥たちの失跡」については、この意味における「再発防止」はなされていると思いたいです。その上で、「万が一にも再び同じような問題が発生した時に、被害を最小限に食い止める」という観点からの対策も併せて立案しておく必要があるはずです。

失跡が発覚した直後、残った鳥たちを緊急避難させようとしても、避難先が無いという事態に陥りました。その理由として「施設の老朽化による修理の必要」が挙げられ、その「修理に取り組む人手の不足」も挙げられています。こういった問題点は事前に把握しておき、何らかの対応策を考えておくべきでした。

常に何かあった時のために、避難先を選定しておく。もし老朽化による修理の必要があれば、修理をしておく。修理にかける人手が足りないのであれば会員に助力を呼びかける。費用が不足するのであれば見積もりを取り、不足分の寄付を募る。こういった事前の取り組みは可能なはずです。

不適切だった点」の「避難を巡る迷走 」で“要因には施設の老朽化や人手不足などがありそうですが、それらに対応する策を用意できなかった事が大きな手落ち”と表現したのはこういった理由からです。

現在は避難できたとはいえ、何事にも「100%」はありません。今の場所に危険が迫ったら、避難先の準備は出来ているのでしょうか。「再発防止」には、こういった視点も含める必要があると思います。

そして「再発防止」の立案が必要な対象は鳥たちの問題だけにとどまりません。情報の取り扱いや批判への対応など、全ての面において「何が問題だったのか」を分析し、それぞれに「再発防止策」を策定する必要があります。

その上で、TASUBASAが取り組む「再発防止策」が妥当なものかどうか、取りこぼしている視点が無いかを、第三者に評価してもらうことも大事だと思います。現に施設開放イベントに訪れた会員に点検してもらった際に

多くの人がご覧いただくことで、他にも安全面において何か問題が見つかるのではないかと思いました。 そして、あるお客様は中庭(今回の事件と関係ない場所です)に開いている大きな穴を見つけていただきました。 私たちが何度も何度も目を皿のようにして、チェックしたにも関わらず、見つけられませんでした。 おかげさまでその穴の存在に鳥たちも気づいていなかったので、大事にはいたりませんでしたが、このような大きな効果があったことは事実です。 TSUBASA会員の皆様へ

というように、スタッフが気づかなかった問題点が外部からの指摘で判明したと認めています。

自分たちだけで企画・立案した「再発防止策」では不十分です。外部の第三者による評価も踏まえた「再発防止策」の立案が望ましいと思います。

適切な情報公開

不適切だった対応」でまとめたとおり、今回の件に対して「公表が遅い」「発表する情報が不正確」など、TSUBASA側の情報管理能力が不足している感があります。

不測の事態が発生すれば、現場がパニックになり情報が錯綜することは理解できます。そのことを織り込んだ上で、なるべく正確な情報を収集できるような体制を整えておく必要があるでしょう。

そもそも第一報の発表は発生から10日も経っています。その間に錯綜した情報を整理したり、不確定な部分を再調査することが出来なかったということのほうが、より大きな問題だと言えるかもしれません。

TSUBASAは数万人で構成されてる組織ではありません。関係するスタッフは数名という、非常に身軽な組織です。それなのに正確な情報が集められないと言うことは、情報の伝達経路に不備があることは明白です。

当然、担当者が怪我や病気などで連携が取れない場合もあるでしょう。そういった事態を想定した上で、情報の流れがとぎれないような引き継ぎ方法をとるのは、一般の会社などでは常識です

正しく情報を収集したあとは、適切な方法で公開をする必要があります。この点も、残念ながらTSUBASAの対応はお粗末でした。

発表のタイミングや発表を行う「場所」、そして文章の構成力と表現方法。このような「広報」にあたる部分は、ともすれば高度な技術が要求される分野です。小さい組織で一定の水準を維持するのは難しいかもしれません。TSUBASAとしては、可能な限り「誠実な対応」を積み重ねていくしかないでしょう。

曖昧な文章は避け簡潔に表現する。情報が不確定ならそう断りを入れ、確定するまで継続的にフォローする。時系列を整理し、箇条書きなども取り入れて誤解される可能性を排除する。内容に不備があればはっきりと訂正や補足をする。どれもオンライン上で信頼関係を築くためには大事なことばかりです。

相手に判りやすい情報発信を常に心掛けて欲しいです。

批判や指摘への対応

これまでTSUBASAの情報発信は、TSUBASA側から一方的に配信するものであり、双方向のコミュニケーションはほとんどありませんでした。仮に何か言いたいことがあれば、TSUBASAに対してメールを送るくらいしかリアクションの方法が無かったのです。

「TSUBASA NEWS」のコメント欄は、そんな中で与えられた初めての「受け手からの発信の場」だったのです。そこに多くの意見が寄せられたのは、初めて表現できる場を得たことで、これまで感じていた想いが一気に噴出したと言えるのではないでしょうか。

私には、ごく一部の“不満分子”がTSUBASAへ悪意ある攻撃を仕掛けているようには見えません。実際、私が今回まとめたようなTSUBASA側の問題点を、既に指摘しているコメントも多くあります。

このような意見に耳を傾けず、パスワードに守られた中でのみ細々と情報を公開していくやり方は、NPO法人を目指すと公言する団体にはふさわしくないと思います。

まず寄せられた批判や指摘に対するTSUBASA側の回答を、「報告書」のような形で公表するべきではないでしょうか。その上で、会員が自由に意見を交換できるような場を設ける必要があると思います。そして、その場で出された不満や指摘にも常々注意を払い、活動内容の研鑽に生かしていくべきではないでしょうか。

会員の扱い

今回の一連の問題をまとめていく中で、最後に行き着いた論点はこの「会員の扱い」でした。TSUBASAにおける「会員」の位置づけとはどの様なものでしょうか。

前述したとおり、TSUBASAは公共のものではなく、個人(法人)のものという扱いです。そのTSUBASAが掲げた理念に賛同した人が、金銭を払うことで会員の資格を得ます。この時、会員はどこまでTSUBASAの運営に関われるのでしょうか。この点について、TSUBASAの会員定款には具体的な規定が無いようです。

会員として、自分たちに与えられた権利と義務はどのようなものか。これまで、多くのTSUBASA会員もこの点をあまり意識してこなかったのではないかと推測します。

いくら会費を払っているとはいえ、TSUBASAの運営費全体に占める会費の割合は微々たるものであることが想像できます。そうなると、あくまで「お客」として、バッジを貰い、TSUBASAからの情報を楽しんだり、用意されたイベントに参加する権利があるだけなのでしょうか。

それとも、少額とは言え金銭を払った以上、株式会社における株主のように、組織の運営について一定の発言権を持つものでしょうか。

こういった「会員としての権利」の範囲がどの程度なのか。その認識が違うもの同士で議論しても、恐らく話がかみ合いません。自分たちが所属している団体に対して、自分たちが出来るとされていること何か。きちんと確認をしておかないと、“思惑のすれ違い”は今後も続くと思います。

もう一つ、見つめ直す必要があるのは「何に対してお金を払っているのか?」という点です。

あなたがお金を払ったのは、「TSUBASAの活動が素晴らしいと感じたから、それに対する応援として」という「無条件の支援」でしょうか。掲げている理念に共鳴し、自分もその実現に向けて協力したいという「活動へ参加するための対価」でしょうか。これまでの実績に対する「ねぎらい」でしょうか。予告されている未来の活動に対する「投資」でしょうか。

それとも、「施設にいる鳥たちが心配だから」という「身代金」でしょうか。不幸な鳥たちを前にして、何も出来ない自分に対する「免罪符」代わりでしょうか。

たとえどの理由であっても、決して間違いでは無いと思います。自分が何にお金を払ったのかを正しく認識し、それにふさわしい使われ方をしているのかを気にとめる。このような面からTSUBASAへ働きかけていくことも大事だと感じます。

これまで色々な不満があっても、会員がそれを表明することなく許してきてしまった側面があるように感じます。今回のTSUBASAの姿勢を作った一因が、会員の側にもあるように思いました。

TSUBASAの会員に与えられた権利と義務とは、どのようなものでしょうか。